廃止でいいの?後期高齢者医療制度(その2)

4~5年前のことですが80歳代前半の外来女性患者さんに私は、処方薬を少し整理しようと提案をしたことがあります。神経質な彼女は私の外来で5~6種類の処方を受けていました。彼女によくよく聞いてみると当科以外に整形外科、循環器内科、心療内科の3診療所を受診中とのことでした。処方されている薬剤の説明書を全医療機関分見せてもらって私は驚きました。何と全部で20数種類の薬剤が処方されていたのです。同じ薬効の薬が3ペアーありました。「これ全部飲んでるの?これ全部飲んだら死ぬよ」と思わず尋ねると、申し訳なさそうに「飲みやすいからこれとこれとこれを飲んでいる」との答え。循環器内科から処方されている彼女にとって一番必要だと思われる高価な薬は服用されてはいませんでした。
高齢者の五月雨受診が問題だと10年以上前から言われ続けてきました。月曜日は○○整形外科、火曜日は××眼科、—–、金曜日は☆☆内科と連日の外来受診、聞けば「友達と会えると寂しさが紛らわせるから」とのこと。これによって処方される薬はすぐに20~30種類にのぼり、その多くが捨てられている運命です。
捨てられるならまだ被害は少ないものの、服用すれば高齢者の腎機能・肝機能では薬害が発生する可能性は否定できません。ある腎臓専門医によれば糸球体腎炎などの原因疾患を持たない高齢者の腎機能の低下の一番の原因は多すぎる薬剤の服用だそうです。院外薬局でのお薬手帳による服薬指導が効果を発揮するはずですが、結果は上記の通りです。
これを管理・指導する役が後期高齢者医療制度に盛り込まれているかかりつけ医の意味です。高齢者の健康を管理し、薬剤の重複投与を防止し、ある時はゲートキーパーとして症状にあわせて必要があれば専門外来を紹介するこのかかりつけ医のどこがいけないのでしょうか? 決してフリーアクセスが制限されるものではありません。

廃止でいいの?後期高齢者医療制度(その1)

民主党が総選挙で大勝致しました。民主党ホームページ上に掲載されている民主党政策集INDEX2009を詳しく読んでみました。さすがに選挙前になると2008年に出た民主党医療制度改革大綱とは程遠い内容になっています。例えば、民主党医療制度改革大綱では38万床の療養病棟のうち11万床を削減するとしていましたが、今回は「療養病床38万床を維持しなければなりません。」となっています。「後期高齢者医療制度は廃止する」、と明記されていますが、「包括払い制度は推進する」そうです。その後段で「なお、後期高齢者医療制度でも外来医療費を定額にできる『包括払い』のような制度が導入されていますが、仕組みは全く異なります。75歳以上の高齢者のかかりつけ担当医が、慢性疾患を抱えがちな高齢者について、定期的に診療計画書を作成し、生活全般にかかわる指導・診察を行えば後期高齢者診療料が算定できるというものです。これは医療現場の理解を得られておらず、後期高齢者に限って医師へのフリーアクセスが制限され、必要な検査ができなくなる恐れがあることなどから民主党は反対しています。」と書かれています。
本当にそうでしょうか?今回のシリーズでは激増する高齢者にどうやって健やかに暮らして頂くかについて思うところを書かせて頂きます。