在宅医養成の試み(終章)

 国(厚生労働省)も日本医師会も「在宅へ」という方向性を明示し、「総合医」や「かかりつけ医」、「訪問診療医」の意義を強調しているのに、肝心な患家の負担という意味ではまだまだ整備がされていません。国が在宅医療を本当に拡大したいのなら、家族に負担のない病院医療と比べて、家族に負担の生じる在宅医療は費用負担を軽減しないと在宅医療が拡がるはずはありません。サービス提供側も在宅であるが故に高額になる指導料や処置料を、献身的な家族から頂くのはつらいことです。せめて負担が病院医療の半額(この場合5%)にならなければ、「やっぱり家で看とろう」と思われる家族の絶対数は増えません。日本の超高齢化社会を乗り切るために、是非早期に負担軽減して頂きたい分野だと思います。
さて、このタイトルで長々と書いて参りました。在宅医養成を法人で取り組もうと心に決め、数々のトライアルを行って参りました。在宅医が育つのを待っているだけではいけないと考えたからです。もはや、訪問診療を抜きに開業は考えにくい状況になっているのに、開業を目指す勤務医は在宅のフィールドへは無関心です。福岡や東京で行った開業支援セミナーで持論をお話すると、理解はして頂けますが自分から飛び込もうという先生にはなかなか巡り合えません。
そこで、私が今までこのブログや講演の中で強調してきたポイントをわかりやすく見て頂くために動画「こんな方法があったんだ!! 必見!!開業する前に(白十字式)訪問診療医養成プログラム」http://www.tominaga-message.com/houmon/
を作成致しました。是非御覧下さい。
時代は在宅医療の充実を求めています。これからも今まで以上の情熱を持って在宅医を養成したいと思います。皆様、どうかよろしくお願い致します。

在宅医養成の試み(その14)

もうひとつ、体験者の声を紹介させて頂きます。
        「母と一緒に“大切な父”を自宅で看とれたこと」
 肺がんで入退院を繰り返していた父。「手術もできないし、これ以上治療できない」と病院の主治医に言われ、自宅で母と一緒に、父の介護がはじまりました。近所のクリニックの先生や看護師さんが、毎日、点滴したり、痰をとりに来てくださったので安心しました。
 そんなある日、私は婦人科の病気で入院してしまいました。手術が終わり退院して5日目、父は亡くなりましたが、それまでの毎日、父は酸素吸入をつけていて息苦しいのに、私のことばかり心配してくれました。弱音を吐かない強い人でした。
 亡くなるときは一瞬でした。私は、もう意識のない父の姿を見守りながら、「家にいたからこそ、母に看とられて父は亡くなることができた」と思いました。病院だったら亡くなる瞬間は、そばにいられなかったかもしれません。
 何年も介護している方は、看病疲れでノイローゼになったり、倒れたりすることもあると聞きます。たしかに介護は大変なことだと思います。でも、家族や周囲の人たちみんなで協力できれば最高だと思います。
 

 このように在宅医療は病院の看とりと比べ家族の満足度が全く違います。病院では医療(延命)を優先するが故にまともな看とりができないことがあります。反面、在宅では家族の身体的・精神的負担も重いものです。病院に任せきりで、極端にいえば海外旅行をして遊んでいるのに、費用は1割負担(高齢者の場合)、一方、家族が一生懸命に家庭で支え、時には医師や訪問看護師に代わって命をつないでいるのに費用はやはり同額の1割負担、これはおかしな話ではありませんか。