日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四百時間の証言より」が教えてくれること (その2 歴史に学ぶ必要性について)

以前にお話ししたかもしれませんが、当法人では理事長と若い職員がひざ突き合わせて意見し合う機会を作ろうと、K-T塾(君と富永の塾)を昨年から始め一年に4回の懇談会(時には鍋をつつきますが)を行い今年で2年目になりました。一年を締めくくって塾生との懇談に当たって職員にも聞いてもらえるように、1回目と4回目は講演会の形式をとっています。4回目のテーマは「日本人として親として考えてほしいこと」と題して話題提供をしています。その中で「歴史に学ぶ必要性」を必ず話します。その理由を半藤一利氏が、「次世代へ伝えたいこと」のなかでこう話してくれています。 歴史というのは要するに、年表とかを覚えることではない。歴史というものは人間が作るものですから、つまり、人間を知るため、人間をよくわかるためには歴史が一番いい。歴史をやるということは人間学だ。歴史学ではなく人間学だと思って見れば、人間というものはいかに、こういう危機のときに周章狼狽して判断を間違うか、自分の命が惜しいばかりに、いかに卑劣なことをするか、そういうことが歴史にはたくさん事例があるわけです。それを知るということは、ものすごく日本の将来のためにいいことだと思うのです。とくに昭和史を学ぶことは、いまの日本人をいっそうよく知ることになります。(半藤一利氏)

「日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四百時間の証言より」が教えてくれること(その1 はじめに)

澤地久枝、半藤一利、戸高一成著、「日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四百時間の証言より」(岩波書店)を読みました。計400時間にも及ぶ反省会のテープの存在が偶然にも明らかになり、NHKのスタッフが3年の取材を経て全3回のNHKスペシャル「日本海軍 400時間の証言」(第1回「開戦 海軍あって国家なし」、第2回「特攻 やましき沈黙」、第3回「戦犯裁判 第二の戦争」)と特集番組「日米開戦を語る 海軍はなぜ過ったのか」が放送されました。NHKによる戦争関連の8月の番組はいつも視聴者層が60~80歳くらいですが、この反省会の番組では30~40歳代の年齢層の人に多く見られたそうです。特集番組「日米開戦を語る 海軍はなぜ過ったのか」は高い視聴率を獲得し、この本が出版されることになったのであろうと思われます。戦争中の軍の記録は終戦直後、連合軍が日本を占拠する前に、軍部が重要資料のほとんどを焼却処分としておりましたし、学校ではGHQからの指令で、昭和20年12月31日に歴史と地理と修身の授業を廃止しろということになりました。日本の近代史をきちんと教えてもらえなかった若い世代が、足かけ5年の長い戦争において300万人以上の犠牲者を出し、国家滅亡の危機に陥らせた戦争突入への経緯はいかなるものであったのか、なぜ勝算もないまま、戦争への道を突き進んでいったのか、昭和が遠くなってきたこの平成20年代に「きちんと歴史を学び理解しておきたい」という欲求がこの高視聴率をもたらしたものと思います。
 このブログでは我々日本人は極めて勤勉で真面目な愛すべき人種であるのに、残念ながらいつの時代もリーダーに恵まれたとは言い難いことを書いてきました。歴史書にも学校教育の場でも明らかにされてこなかった昭和の一時代の真実を知ることは我々日本人の一人でもある指導者がいかに判断を誤っていくのか、その人種的遺伝子を知ることによって、我々は明日の行動をより間違いないものに変えていくことができるのかもしれない。そんな想いでこのシリーズをスタートします。
 この本は対談形式をとっていますが、文意が変わることは本意ではないので、テーマに対するコメントはほぼ原文(強調文字の部分、一部要約)のままで発言者名をその末尾につけることにします。ご了承ください。