「説明は横文字ばかりで理解できなかった・・・群馬大学第二外科報道より」その6

説明支援ナース登場の訳~その3~
 一方、患者さんにとっても何でも質問できる雰囲気の中で、何度でも読み返せるパンフレットを用いての説明は価値の高いものになると考えます。自分がどういう病気で、何のためにその手技が必要で、どういう利点と欠点があるのか、合併症が起こった時にはどういう処置をしてくれるのか、そしてそのほかにどのような手技や方法があるのかを知った上で、自分で一つを選択できる、これこそ患者さんが求める知る権利に応える最良の方法の一つに違いありません。事実、われわれの病院でこの方法で説明をさせていただいた患者さんの評価と満足度はことの外高く、時間の節約とストレスの軽減の面から担当医からもよい評判を頂いております。お時間があれば、当サイト内理事長メッセージ、急性期医療編「ストレスからの解放」(動画)をご覧下さい。
とくに、手術の場合には家族の同意が欠かせません。高齢の患者さんのみの外来受診ではその日のうちの承諾書作成は無理な話です。DPC制度下の現在、緊急手術を除いて予定手術までには時間があります。医師に代わって説明支援ナースが家族と面会説明し、納得が得られた時点で医師を呼び承諾書を作成します。「遠方だし、仕事が忙しいから行けない」と答える家族の言葉はそのままカルテに説明支援ナースが記載します。合併症が起こった後で「大事な母をこんな目にあわせて」とおっしゃるなら、大事なお母さんの大きな手術の前に合併症が起こりうることは理解すべきだと思うからです。そんな場合も、メールでパンフレットを送ってさしあげるといいのかもしれません。メールでの応答の後、承諾書にサインが頂ければ問題は解決するものと思われます。
 DPCが始まって、入院期間はさらに短くなりました。現在も一部には疾患定額制の導入もあり、日本版DRGの登場も時間の問題と思われます。患者さんにとって大きな問題である入院も、短い期間では患者さんと医療者とのコミュニケーションも淡白なもので終わりがちです。加えて、生活習慣病など繰り返しの入院が必要な疾患は増える一方です。一人の患者さんを、外来から病棟まで一貫して看て護る人間が必要なことは明らかです。看護師を外来、病棟と縦割りにしているのは病院の組織上の都合に原因があるわけで、決して患者さんの立場を考えてのものではありません。その分野のプロである説明支援ナースには外来で自ら説明し、理解を得た患者さんが、実際にどのような入院生活を送るのかを是非見ていただきたい。入院初日に顔を見せたら入院が初めてで不安な患者さんの気持ちもきっと落ち着くことでしょう。手術の前日も外来で与えた安心のおさらいをすることで患者さんは勇気づけられることでしょう。手術当日、翌日と患者さんがどのような状態で一日を過ごされているのか、自分が説明した内容とどう違うのか、いつ頃からどのように回復されて退院に近づいて行かれるのか、説明支援ナースにとって毎日が勉強になるはずです。毎日、短時間の訪室で構いません。病名は同じでも、患者さん一人ひとり異なる回復の様子、これを多数例経験することで外来での説明にも幅が出てくるものと考えます。きっと素晴らしいクリティカル・パスの立案者になってくれることでしょう。退院が近くなったら、次の外来受診のお約束をします。一貫して看て護る人にだけ、話してくれる入院生活で感じたこと、病院が改善すべきこと。ここに宝が隠されていることを病院管理者は知るべきです。
 医師は多忙で目前の患者さんへの対応で手いっぱいです。医師はオールマイティですべての分野に真面目にかつ精力的にかかわってきた、これが日本の病院の姿だと思います。しかし、医師不足で医療崩壊(本当は病院崩壊)が叫ばれる昨今、看護師の力を信じ、権限を与え、任せることが解決策の一つだと考えています。形だけ、看護師の副院長を作って満足している病院には未来はありません。
 われわれ独自の法人内認定制度の一つ、説明支援ナースの誕生のいきさつを書いて参りました。この試みはまだ新しく、未完成です。数多くの方々からご意見を頂戴できれば幸いです。