「日本海軍はなぜ過ったか 海軍反省会四百時間の証言より」が教えてくれること(その11 続・それで勝てると思っていた)

そういう意味では、組織として何も考えていなかったと言われれば、たぶん新しい事態を考えていなかったのでしょうねそれで勝てると思っていた。反省会のなかでも「本当に
勝てると思っていたのかねぇ」なんて。(半藤一利氏)
「勝てるつもりでやったんだけどねぇ」なんて。(中略)問題は、どうしてそんなふうに都合よく、自分たちに有利なように、どう計算しても自分たちが勝てるような考え方をする
のかということですよ。(澤地久枝氏)
自分に都合のいいように解釈して勝つ作戦をつくって、ずっと保持していくわけです。長年そういう作戦計画でやっていると、現実を見ないことが普通になっているんですね。現
実を見たら勝てないのだから、図上演習でも、沈没と判定された空母を、いまのは沈まなかったことにする、などど言う手前勝手なことを平気でやる。そんな勝手が通るなら、図
演なんかやらなくていい。(戸高一成氏)
実際の戦闘になったら、国力が大きく違うし、時間が経てば経つほどこの差は開いていく。その窮境に立って戦っているんだという、自覚があれば、もっと知恵の限りを尽くして戦うのが本来の軍人のやりかたではないかと私は思う。ない知恵を絞って、というはずが、実践の場では予期せぬ事態に混乱している。これが軍隊の指揮官なのか、と思ったんですよ。(澤地久枝氏)

 国をリードする立場の人々、戦時であれば政府、陸・海軍省から実践の指揮官の将校まで、平時であれば政府や各省庁のエリート官僚、そして地方自治に当たる公務員、この日本の頭脳に当たる方々の人間力が国の将来を決めていくのだろうと思います。政府や省庁の予測は毎度大きく外れ、誰も使わない空港や道路など公共投資の無駄があるかと思えば、まだまだ日本は貧しい国なのかと思わせるような、弱者支援策の欠如、これらを目の当たりにしたとき、自分に都合のいい解釈をして作戦計画を立ててきた指揮官や知恵の限りを尽くして戦ったを思えないような軍人の姿をこのように指摘されると、国をリードする人間の責任の重さを痛感します。