食物アレルギー
食物アレルギーは、特定の食物を食べる事によってアレルギー反応が起こる病気です。じんましんのような即時型反応が起きたり、アトピー性皮膚炎の状態が悪くなったり、またアナフィラキシーという命に関わる重い症状が稀ではないことのほか、症状そのものよりもアレルギーの原因食物を食べないようにする(除去食)ことで、子どもさんや保護者の方の日常生活への影響が大きく、子どもさん個々に応じたきめ細やかな対応が必要です。
このページでは、慢性疾患外来で行われている食物アレルギーの診療についてご案内します。
【初回の診察】
紹介状をご準備の上、電話で初回の診察(初診)をご予約ください。母子手帳を必ずご持参ください。
受付が済んだら、身体計測、問診、診察と進みます。食物アレルギーのお子さんが病院に初めて見えるまでのいきさつ(経過)は、子どもさんによってそれぞれ大きく異なり、経過を詳しく伺うことが体の診察や血液検査以上に重要です。これがないと検査にも診断にも進みませんので、必ず子どもさんと同居の、よく事情や経過をご存知の方(一般的にはお母さん)が一緒に見えてください。
初診時の検査でよく行われるのはアレルギーの血液検査(CAP-RAST)ですが、目的や状況に応じて必ず行うわけではありません。
【当院で可能な検査】
(1)血液検査:いわゆるアレルギーの血液検査(卵白がクラスいくつ,とか)というのは、特異的IgE抗体検査を指していることが多く、当院の場合はこの中のCAP-RASTという検査を行なっています。初めての検査の場合には他の大まかな異常の有無を確かめる目的で、血液一般・生化学的検査、またアトピー性皮膚炎を疑う場合にTARCという検査なども一緒にみています。CAP-RASTは外部発注していますので結果の説明には1週間ほどお時間をいただいています。
(2)皮膚テスト:皮膚科の先生にお願いして必要に応じて皮膚プリックテストを行うことができます。小児科で行っているわけではないので初診時にはできません。
(3)食物経口負荷試験(OFC):下記
【食物経口負荷試験(OFC)】
アレルギーが確定しているか、もしくは疑われる食品を単回または複数回に分割して摂取させ、誘発症状の有無を確認する検査です。(食物アレルギー診療ガイドライン2021・日本小児アレルギー学会)
当院では2009年から117回の検査を行なっています(2022年3月時点)。以下に当院での成績をまとめます。
(3)食物経口負荷試験の実際
食物経口負荷試験は、アレルギー症状の原因食物を実際に食べていただいて症状が本当に現れるかどうかを確かめる検査です。血液検査や皮膚テストに比べて精度が高く、診断や方針決定の上で極めて重要な検査ですが、アナフィラキシーのような重い症状を含むアレルギー症状を誘発する可能性のある検査ですから、検査は行うかどうかの段階から保護者さんと相談の上、慎重に計画を立てます。
ある食品の経口負荷試験を実施することが決まったら、次に負荷試験に使う食品の量と出し方を決めます。食品の量は一律ではなく、子どもさんの過去の症状、普段安全に食べている量の多少、血液検査の数値などを参考に、食卓に日常的に出されるような量を食べていただくのか、安全重視でごく少量にするのか、あるいはその中間的な量にするのかご相談の上で決定します。次に、この検査は子どもさんが負荷食品を食べてくれないと始まらないので、管理栄養士と相談して負荷食の調理法・形態を決めます。
検査は、この検査を始めた当初は日帰りで行っていましたが、帰宅後に誘発症状が現れることがしばしばあったため、現在は原則1泊入院で行なっています。
(4)検査後の方針
負荷試験が陰性だった(負荷食物を食べても症状が誘発されなかった)場合は、摂取した量にもよりますが、食物除去食の解除が進みます。負荷試験が陽性だった(負荷食物を食べることで症状が誘発された)場合は、食物除去を継続し、その後の経過や血液検査の変化を確認しながら、半年から1年以上間を開けて再度負荷試験を計画します。
(5)専門施設への紹介
当科では上図のようにある程度の種類の食物で負荷試験を行なっていますが、たまご以外の食べ物でアナフィラキシーを起こしたことのある子どもさん、原因食物の種類が多くて検査計画の立案が難しい子どもさんなど、より専門的な診療が必要な場合には、アレルギー専門医のいる他の医療機関をご紹介いたします。