臨床研究管理部(治験管理室)について
臨床研究管理部(治験管理室)は、佐世保中央病院における治験および臨床研究に係る業務を管理・支援し、治験および臨床研究の適正かつ円滑な実施を図ることを目的に2011年4月に新設されました。
治験管理室における治験事務局業務(治験審査委員会事務局を兼ねる)および治験コーディネーター(CRC)業務に基づいて治験を管理・支援する機能のほかに、臨床研究を管理・支援する機能を有し、治験による先端医療の提供・次世代の新薬開発への協力および臨床研究への関わりを通じて、社会医療法人として社会的責任の一部を果すため日々活動しています。
臨床研究管理部 部長 平方尚之
臨床研究管理部の業務
- 治験の管理および支援に係る業務
- 臨床研究の管理および支援に係る業務
- 医薬品製造販売後調査(PMS)の管理および支援に係る業務
- 治験審査委員会の運営に係る業務
- 倫理委員会の運営に係る業務
- 臨床研究の規制(法、指針)の教育・啓蒙に係る業務
- その他の業務
臨床研究管理部 職員配置
臨床研究管理部 薬剤師 | 常勤1人 |
臨床研究管理部 助手 | 非常勤2人(※1) |
治験管理室 治験コーディネーター(CRC) | 派遣3人(※2) |
(※1)主に臨床研究のデータ管理を担当
(※2)CRCはSMO(治験実施施設支援機関)との契約に基づく派遣(治験事務局業務担当を含む)
取得認定資格
JASMO公認CRC(※3)…2名
(※3)JASMO公認CRCは、日本SMO協会が優れた資質向上を目的として、認定試験に合格したCRCを臨床試験のスペシャリストとして公認するものです。
治験について
治験とは、患者さんに被験者としてご協力いただき、薬の候補の有効性(効果)や安全性(副作用)を調べるために行う臨床試験の事です。製薬会社は、この臨床試験で得られたデータをすべてまとめて、国に新たな医薬品として認めてもらうよう申請をします。国の厳格な審査をパスし承認されることによって初めて、薬の候補が新しい医薬品(新薬)となり、世の中に誕生します。
治験は、国が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)」に定められた要件を満たす医療機関において、その省令に定められた厳格なルールを守りながら行われます。
また、〝治験コーディネーター〟とよばれる治験業務を専門に支援するスタッフが配置され、治験を担当する医師の指導のもとで、参加同意に関する説明の補助・治験のスケジュール管理・治験中の患者さん(被験者)のサポートなどを受け持ちます。
治験実施医療機関の要件(GCP省令より)
十分な臨床観察・試験検査を行う設備・人員を有していること
緊急時に被験者に対して必要な措置を講ずることができること
治験の実施や継続の是非を審査する委員会(治験審査委員会)が設置されていること
治験を担当する医師、薬剤師、看護師、治験コーディネーターなど必要な職員が十分に確保されていること
※当院は、この要件を満たしています。
治験コーディネーターとは
治験コーディネーター(Clinical Research Coordinator、以下CRCと略します)とは、被験者の人権や安全を保護し、ルール違反のない信頼性の高い治験がスムーズに行われるよう、管理調整する治験専門のスタッフです。
治験コーディネーター(CRC)の役割
- 被験者スクリーニング
被験者スクリーニングとは、多くの患者さんの中から、治験の基準に適格である(選択基準に適合し、除外基準に該当しない)被験者の候補を選別することです。被験者の候補は、基本的には治験担当医師に挙げてもらいますが、医師の手間を省いて、治験ごとの細かい基準(条件)に適格な候補者を効率よく探し出すために、CRCがこのスクリーニングをサポートしています。
- 関連部署との連携や調整
関連部門の協力と連携のもと、CRCは治験がスムーズに行われるよう管理・調整しています。
- 同意取得の補助説明
被験者に対する治験参加に関する文書による同意説明と同意取得は、被験者保護の観点から法律で必須とされています。しかし、外来診察中に医師から治験に関する説明文書の内容をすべて説明するのは困難なため、医師でなくても説明できることはCRCが補助説明を行っています。
- 治験のスケジュール管理や調整
治験期間中は、治験実施計画書に基づき定期的な診察・様々な検査(採血、採尿、画像検査など)が実施されます。規定(許容範囲内)の来院日に、決められた診察・検査などができないと、治験薬の有効性・安全性の評価に関するデータなどが使用できなくなる場合があり、被験者の善意が無駄になってしまします。このため、診察・検査がスムーズに実施できるように、CRCがスケジュールの調整を行っています。
- 症例報告書の作成補助
症例報告書とは、治験依頼者(製薬会社)に治験の結果(データなど)を報告する書類のことで、この症例報告書に記載されたデータなどを基に、新しい薬の評価(承認申請)が行われます。有害事象の重症度や因果関係の判定などのような医学的判断を伴うことについては医師が記載しますが、検査値などの記載はCRCでも記入可能であるため、症例報告書の作成補助もCRCの業務のひとつとなっています。
- 有害事象発生時の対応
治験における有害事象とは、治験薬が投与された際に起こる、あらゆる好ましくないあるいは意図しない徴候(臨床検査値の異常を含む)・症状または病気のことであり、治験薬との因果関係の有無は問いません。また、副作用とは、有害事象のうち、治験薬との因果関係を否定できないものをいいます。有害事象・副作用が発生した場合には、決められた手順にそってCRCも対応します。
- その他(その他として、当院では以下の業務も行っています。)
・被験者のケアおよび相談窓口
・治験審査委員会のサポート
・治験開始に向けた準備(スタートアップミーティングによる開始前の打合せを含む)
・治験依頼者への対応(施設調査、事前ヒアリング、モニターの原資料直接閲覧への対応を含む)
・監査(治験依頼者による内部監査、規制当局によるGCP実地調査)への対応
治験に参加するメリット・デメリット
メリット
先端的な医療にふれることができます。 |
治験薬の方が、今ある薬よりも良い効果が期待できます。 |
専門医による丁寧な診察や詳細な検査をうけて、病気の状態を正確に知ることができます。 |
治験コーディネーターが、同意説明・スケジュールの調整や質問・相談などに対応します。 |
治験薬や治験に関する検査にかかる費用の全額(または一部)を製薬会社が負担します。 |
治験参加のための自己負担を軽減するための協力費(負担軽減費)が受けられます。 |
新しい薬を世に送り出すための医学ボランティアとして社会貢献ができます。 |
デメリット
現在服用している薬をやめる必要がある場合があります。 |
開発中の薬(治験薬)ではなく、有効成分が入ってない薬(プラセボ)を服用することがあります。 |
まれに、医師が予想しない副作用がみられる可能性があります。 |
丁寧な検査を行うため、通常の治療に比べて来院の回数や検査が多いことがあります。 |
治験のスケジュールや注意事項を守る必要があります。 |
治験によっては、日誌や記録をつけていただく場合があります。 |
治験を勧められたら…
治験を紹介する際は、治験担当医師と治験コーディネーターより〝薬剤の期待される効果や起こりうる副作用、試験計画の内容、プラセボの可能性、守って頂きたい事、メリットとデメリット〟などについて文書により十分に説明を行います。そして、ご納得頂き、最終的には患者さんご自身で参加するかを決めて頂いた上で、文書により同意を得るといった適正なインフォームド・コンセントの過程を経て、治験に参加頂いています。
治験への参加は、強制ではありません。十分にご理解されご納得いただいた上で参加をお決め下さい。ご家族やご友人へ相談後に参加を決めて頂いても大丈夫です。
治験コーディネーター(CRC)のメッセージ
患者さん-治験担当医師などの医療スタッフ-製薬会社が協力して治験を行うことで、新しいお薬が誕生します。私たち治験コーディネーター(CRC)は、みなさんの架け橋となって治験をサポートします。 わからないこと・確認したいこと・不安なことなどどんな些細なことでも、納得するまで遠慮なくお問い合わせ下さい。
治験参加カードについて
- 保険証と一緒に常に携帯して下さい。
- 治験に参加されている間に、他の診療科や他の医療機関で診療を受ける場合には、医師に提示して下さい。
- 他の薬(薬局等で購入された一般の薬も含みます)を服用される場合には、あらかじめ、治験担当医師 または治験スタッフにご相談下さい。
- 感染症(呼吸器感染、皮膚感染、尿路感染など)が疑われる場合には、速やかに、治験担当医師または治験スタッフにご相談下さい。
治験審査委員会
治験審査委員会は、医学・薬学などの専門委員・非専門委員および外部委員によって構成された医療機関の長・治験責任医師および治験依頼者から独立した委員会で、治験の原則(ヘルシンキ宣言に基づく倫理原則やGCP省令の遵守など)に従って、全ての被験者の人権の保護、安全の保持および福祉の向上を図るため、倫理的・科学的および医学的・薬学的妥当性の観点から治験の実施および継続などについて、定期的に審査を行っています。