てんかんの治療

てんかんとは

てんかんは、大脳の神経細胞が異常な電気発射を起こすことにより、身体にいろいろな発作症状を起こす慢性の疾患です。頻度は約100人に1人で、日本国内には約100万人のてんかん患者さんがいると考えられています。発症年齢としては小児と高齢者が比較的多く、小児では成人と違い数年で自然に治ってしまうタイプもあります。慢性疾患なので、年余にわたって症状を繰り返すことが特徴です。てんかん発作の程度や頻度、治りやすさなどは、てんかんのタイプによって異なります。

てんかんの原因

明らかな原因がある場合症候性てんかん原因がはっきりしない場合を特発性てんかんと呼びます。小児の症候性てんかんは、分娩時の低酸素脳症や急性脳炎・脳症など脳の病気の後遺症として認められることがあります。症候性の場合は知能障害やその他の脳機能障害がみられることが多いですが、特発性には通常みられません。最近は、遺伝子のレベルで原因がみつかるようになってきており、新しい診断や治療法の開発が期待されています。

てんかんの症状

てんかん発作は、脳の一部の場所で異常な電気発射が起こる焦点発作、脳全体に同時に起こる全般発作に分けられます。焦点発作を主体とするてんかんを焦点てんかん、全般発作を主体とするてんかんを全般てんかんといいます。焦点発作には、異常な電気発射が起こる脳の場所によって様々な症状がみられます。例えば運動野のある前頭葉に起こると手足のけいれんや体の激しい動きなどがみられ、記憶や感情、自律神経の中枢を含む側頭葉に起こると動作の停止、反応の低下、チアノーゼ、気分不良、恐怖の感情などがみられます。全般発作では全身のけいれん、急に力が抜けて倒れる発作、手や足が一瞬ピクッとする発作、ボーとして反応がなくなる発作などがみられます。ただし、このような症状はてんかん以外の病気でもみられることがあるため、診断には医師による詳細な問診が必要不可欠です。

てんかんの診断

前述のように、てんかんの診断は、あくまで詳細な問診に基づいて行われます。脳波も検査しますが、脳波異常のないてんかんや、脳波異常があってもてんかんでない場合があります。つまり、「脳波異常=てんかん」ではなく、「脳波異常がない=てんかんではない」でもありません(ここを誤解している人がたくさんいます)。一方、発作を起こしている最中には特有の脳波の異常が出現することから、ビデオカメラで本人の様子を撮影しながら発作時の脳波を記録する検査(長時間ビデオ脳波モニタリング)は診断に非常に有用です。脳波の他にも、頭部MRIで脳の構造や病巣の有無を調べたり、必要に応じて脳血流シンチグラム、PETなどの画像検査や知能検査などを行うことがあります。当院では頭部MRI以外の画像検査や長時間ビデオ脳波モニタリングはできないため、必要な場合は専門の病院をご紹介しています。

てんかんの治療

治療するにあたっては、あくまで「発作が完全に消えた状態」(発作ゼロ)を目指します。なぜなら、例えば発作が全くないか、年に1回でもあるかどうかでは日常生活における支障や心理的ストレスは全く違うからです。適切な抗てんかん薬の内服を行えば、70~80%の患者さんは発作ゼロになり、普通の生活を送ることができます。しかし逆にいうと、20~30%の患者さんは抗てんかん薬を様々に工夫して投与しても、発作をゼロにまで抑えることはできません。だからといって、発作ゼロを目指すあまり薬を増やし過ぎて、眠気などの副作用で生活の質が低下するようでも困ります。このような場合は、てんかん外科手術や、迷走神経刺激術(VNS)などの外科的治療を選択することがあります。治療にあたっては、あらゆる治療の選択肢をご説明した上で、患者さんの生活全般を視野に入れ、医療者と一緒に方針を決めていくことが大切と考えています。