お勉強はもう苦痛ではないですか? -慢性期医療へのお誘い- (その4)

医師は自己研鑽をするのだと日本医師会や地域中核病院の主導で各種研修会が盛んに行われています。ある程度の知識を補うことはできそうですが、系統的な集中プログラムはあまりお目にかかれません。ましてや“明日から役に立つ手技”の取得は望めません。
 医師不足が深刻化し、病院崩壊が叫ばれる中、結婚・育児で長期現場を離れたママさんドクターに対してフレックスタイム制などを活用した再就職支援計画が現在注目されています。紙面では、麻酔科医師などフレックスタイム制度が活用しやすい分野では効果を上げていることを伝えています。しかし、これはゼロ勤務の状態から就勤を目指す試みであり、働きながらスキルアップを目指すこととは根本から異なります。勤務医不足が喫緊の課題となっているのに、スキルアップすれば勤務医寿命がもっと伸びるのに、どうもこの国はこの問題に関して真剣に取り組む姿勢に欠けているように私には思えます。
 我が国の一般病床数は90万床を切り、在院日数の短縮とともに占床率は下がり、確実にその数を減じています。厚生労働省が示す将来像はいつの間にか必要一般病床数は40~50万床とされています。「半分は消えなさい」というメッセージでしょうか。なんとなく一般病床と届けたベットはどこへ行けばいいのでしょう。急性期ベットとして生き残った現場ではとてもストレスフルな毎日です。DPCの導入で常に他院との比較にさらされるようになり、医療の効率化はとめどもなく進みます。「折角入院したのだから、ゆっくり骨休めして」とかつては農耕民族日本人の骨休めの場であった病院も、国家財政のひっ迫とともに在院日数は世界各国のレベルまで短縮するのは時間の問題です。開業が難しくなると、ポストを巡る医師同士の競争は激しくなり、スキルアップが常に求められます。患者さんの家族は強烈な自己主張の団塊の世代、医療技術レベルへの過度な期待と安全管理が当然視される中で医療の不確実性を伝えなければならない難しさなど、患者意識の急激な変化についていけない現場は明るくはありません。いつまでも続く当直と医療訴訟の恐怖など急性期医療の現場にあなたはいつまで耐えられますか。お勉強はもう苦痛ではないですか。そろそろ見切りをつけて、まだまだ20~30年続く自分の将来像について考えてみませんか。

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