お勉強はもう苦痛ではないですか? -慢性期医療へのお誘い- (その7)

私はケアミックス病院である白十字病院の介護力強化病棟で担当した経鼻チューブから栄養をとり、関節が拘縮し動けない高齢者、認知症が進みコミュニュケーションがとれない患者さんに対する無力感から、大学に代わる慢性期医療に必要なスキル習得のための講座の必要性を感じていました。そこで福岡の「実践老年病研究会」で講師を務められた、それぞれの領域で優れた業績を挙げておられる先生方に短い講義を頂いたあと、「実際にこういうことが困った」、「あのような時はどうすればいいんだろう」という疑問に応えて解説をしていただく勉強会を開催したいと計画をしています。まさしく実践の老年病の講演会です。まずは、われわれの施設で始めます。福岡市の白十字病院と佐世保市の燿光リハビリテーション病院をテレビ会議システムで結び医師の他、看護師、コメディカルスタッフ有志とこの10月より開始予定です。ストレスだらけの急性期医療に疲れた貴方、慢性期で戸惑っている貴方、お近くの先生なら参加されませんか?是非、お待ちいたしております(笘霈€092-891-2511、白十字病院看護部、深川までご連絡を)。
実はこの手のスキルアップ講座は7~8年も前から実現を夢み、企画をいたしておりました。慢性期医療、特に高齢者ならではの病態の研鑽は当時スポットライトを浴びてはいませんでしたが、いまに必ず必要になるからとある医療関係の大会社と実現に向けて汗をかいていました。全国には優秀なスキルを持ち慢性期医療の現場でご活躍になっている先生方が沢山いらっしゃるので、そのスキルを伝える衛星放送を発信したいと考えました。東京や大阪にわざわざ出張して講演を聴きに行く暇が取れないのだから、医局の受像機に送る方法がとれないものか考えました。大学受験の予備校にでもできることです。この大切なスキルの伝達が「働きながら学べる」ためには衛星放送しかないと考えたのです。しかし、どれほどの視聴者が得られるだろうか、講座にお金を払って見てくれる病院が採算ベースを上回るだけあるだろうか、との観点からこの話はそれ以上の進展をみることはなく、立ち消えになりました。今になって、高齢者医療の研修受講が義務付けられたり、慢性期医療認定講座が満席で入れないのをみると悔しい想いでいっぱいですが、もう人に頼らず、わが法人で出来るところから始めることにいたしました。

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お勉強はもう苦痛ではないですか? -慢性期医療へのお誘い- (その6)

福岡に「実践老年病研究会」という高齢者医療に明日から役に立つエッセンスを討論する研究会があります。平成14年に始まり、今年4月に第19回目を迎えましたが、担当のMRさんに講演記録を見せていただいたところでは、取り上げられたテーマはやはり前回(その5)列記したものがその中心でした。会では複数の講師が講演の後、質問に対しそれぞれの経験から答えていくというやり方が多かったそうです。未成熟な分野であるだけに偏りのない知見を複数の講師が提供するという方式をとっておられるようです。福岡では実に多くの研究会が開催されますが、この会は自発的に参加される医師や看護師が多く、その数は毎回150人に達する勢いだそうです。いかにこの分野のスキルを学びとる機会に医療人が飢えていたかを物語っていると思います。
 最近、在宅医療を評価する考え方から、高齢者の在宅医療を支える医師の教育の必要性に注目が集まりつつあります。後期高齢者医療制度の後期高齢者診療料の算定に当たっては高齢者医療の研修受講が義務付けられています。日本慢性期医療協会は医師・看護師向けの今年で3回目の慢性期医療認定講座をこの夏開催いたします。プログラムはリハビリ部門を除いてやはり同様のテーマでした。定員は200名だそうですが、毎回申込が多くすぐに定員に達するそうです。
 医師になるには国家試験をパスしなければならず、医学生は懸命に勉強します。その量は他の国家資格と比べても格段に多く、難度も相当に高いものです。しかしながら、医学部の教育の中に高齢者医療、老年病を対象とした講座は極めて稀で、大学付属病院に療養病床がない現状では、輩出される医師は急性期医療対象者のみです。医師になるのに100勉強が必要であるのなら、この高齢者医療に自信を持って取り組むにはあと10勉強をすれば足りると思うのです。いきなり療養病棟での勤務を始めても戸惑わないレベルまであと一割のレベルアップで事足りるわけです。ゆっくりと、働きながらでも学べるシステムがあればこれが可能になります。