在宅医養成の試み(その13)

 続いて体験者の声の一部を紹介させて頂きます。
     「自宅は世界一の特別室」
 病院を退院して「在宅医療」を選んだ主人が亡くなるまでの6ヵ月間は、お互いに好きなことを言って、かばいあう楽しい日々でした。亡くなる2週間前、親戚が10人ほど見舞いに来てくれたとき、主人はコーヒーを自分でたててふるまい、「病人だってことを忘れていたよ」とニッコリ笑いました。私にはその笑顔がなによりの贈り物。一生忘れることができません。
 「在宅医療」を選んでよかったことは、病室の人に気を使わなくてすむこと、好きな時間にお風呂に入れたこと、気がねなくトイレに行けたこと、娘や孫と一緒に賑やかに食事ができたこと、急用のときは24時間、医師に連絡がとれたこと。
 自宅は世界一の特別室でした。
と、ありました。
 人生の最期の大切な日々を同室の人に気がねしたり、お風呂やトイレまで思うままにならない毎日にすることが、ご本人にとって幸せなことでしょうか。

在宅医養成の試み(その12)

 「在宅療養」編集委員会が監修された「在宅療養」をささえるすべての人へ-わが家がいちばん-(健康と良い友だち社発行)という本を頂きました。その巻頭文や紹介してある「体験者の声」は非常に参考になる内容だと思いますのでご紹介いたします。
 「はじめに」より(前略)
 一度「在宅医療」を選んだら、「病院に戻れなくなるのでは?」と心配する声も多く聞きます。病状が悪くなるとともに介護の負担が大きくなり、家族が疲れはててしまうこともあります。そんなときは、いったん病院に戻り、状態が落ち着いてきたら、また自宅へ戻るということもできます。
 一方で「在宅医療」に対する誤解もあります。
病院から見放された人がたどり着くのが「在宅医療」だと思っていたり、病人の世話で明け暮れるものだと思っていたり、一人暮らしで介護してくれる人がいないから「在宅医療」はできないと決めつけている人もいます。
 なかには「在宅医療」の存在を知らないために余儀なく別の選択をして、あとで後悔する人もいます。また、「在宅医療」への理解が不十分な医療従事者もまだまだ多く、ただ退院を指示するケースも少なくありません。適切なアドバイスをもらえず、退院後の生活をどうしてよいのかわからなくて、途方にくれている人もいます。
(後略)
 現在、日本人の大多数が自分自身の最期について考えたとき、「自宅で家族に看とられたい」あるいは「意識もないのに生かされ続けるのはごめんだ」と思っているのに、「家族に迷惑がかかるから」という思いで断念しているのはとても残念なことだと思います。