在宅医養成の試み(その11)

5月16日(日)、私は東京国際フォーラムにて行われたクリニック開業支援セミナーでの特別講演を頼まれ上京しました。M3.comの会員さんに限定の講演会と聞いていましたが、正直私は東京では開業はもう難しく、支援の講演会を開いても勤務医の先生は集まらないと思っていました。事実、別の階では他の業者の主催する開業支援の講演会が開かれていましたが、参加の先生は極めて少数という報告でした。私は「在宅医療は開業・医業継承の新たな選択肢となりえるか-これからの開業に必要なスキルアップのために-」というタイトルでこのブログで書いてきたことを中心に約50分間話をしました。大学医局の方針で我々は専門医に仕上げられてきたこと、従ってその守備範囲は狭く開業後に求められるかかりつけ医としての勉強はそれぞれの責任とされていること、それを学んでも開業する適地は都市部にはもはやないこと。その一方で政府が推奨している訪問診療・在宅医療を推進する担い手が医師・看護師共に少なく、訪問診療・在宅医療は件数も費用も伸び悩んでいること、その要因にはそのスキルを学べる施設があまりにも少ないことを述べました。そして、学ぶ機会は療養病棟にいくらでもあること、それを系統的・継続的にプログラム化し、さらに失敗事例を入れた講義形式はスキルを短期間で学び取れるものであること、さらにスキルアップのためのPEG交換回診、褥瘡回診や市内で行われている多職種協働に参加することが早道であることを示しました。また、訪問診療は患者さんご本人ばかりでなく、家族に大変感謝され、頼りになる先生として地域に必要とされる診療所として認知される要素になることを説明いたしました。そして在宅現場の理解のために白十字版短期国内留学を用意していることを付け加え、燿光リハビリテーション病院で2年間のコースを用意し募集をしていると伝えました。最後に、この在宅医療の現場は患者さんの自宅ばかりではなく、有料老人ホームや高齢者住宅など現在は手つかずの状態で、まさに“早いもの勝ち”の状況にあることを示すと、会場の約50人の先生方はぐっと身を乗りだされ反応の良さを感じました。私たちとしても早くこのプログラムを開始したいと考え、燿光リハビリテーション病院の研修コースは初年度に限り“早いもの勝ち”で1年間の短期コースも募集しようかと考えるに至りました。

在宅医養成の試み(その10)

3月下旬、日本医師会主催で北関東の在宅医療のパイオニアとしてこのブログに登場していただいた先生方による「在宅医療支援のための研修会」に参加しました。その先生によると、在宅医として患者さんのお宅におじゃまするときには、大切な心得があるとのことでした。チャイムをせかすように鳴らすことは患者さんや家族がすぐに出られない状況にあることもあり好ましくない。他人に見られたくない部屋もあることを忘れてはいけないし、居室では病院と違って低い位置の姿勢でいることが肝要であると講演されました。診察や検査の進め方など知識はあっても実際に、在宅の場にうまく入り込み、手際よく診療が進められるかがポイントです。
私がお目にかかった北関東の先生に、初対面なのに厚かましくも在宅医療を志す若手の先生がたに在宅医の心得と手際を学ぶために短期間の国内留学をお願いしておりました。在宅医療の担い手を増やしたいとお考えの先生で快諾していただき、わたし共の法人から一人につき3か月程度の国内留学を受け入れていただくこととなりました。そこで行われている多職種協働はまさに“目から鱗”、座学では学べない貴重な経験をされることと思います。私も在宅医療の意義を理解するには在宅医養成コースの2年間の前半に優れた在宅医療の現場に国内留学することが早道であると考えていました。まずは、在宅医療が患者さんご本人にとって、家族にとって、かけがえのない大切なものであることを理解し、それを自らリードするためにどうスタッフを動かせばよいのか、これを体感すればあとの21か月はより有意義になると考えたのです。
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