英国保守党のキャメロン首相が苦境に立たされているとのニュースを見ました。日本の消費税に当たる間接税の税率を17.5%から20.0%に引き上げたこと、大学の授業料の減免比率を引き下げたことにより、市民生活に影響が及び大規模なデモが頻発していることを伝えていました。
英国では労働党政権がずっと続き、前の保守党の首相は以前このブログでもご紹介した「鉄の女」マーガレット・サッチャーです。首相として11年間在任中、徹底した意思と実行力で1980年前後の「英国病」と言われた国家窮乏の危機を乗り越えた名宰相として評価されています。1982年軍事独裁政権下にあったアルゼンチンの侵攻に対して敢然と立ち向かい、地球の裏側にある英国領へ軍を派遣し、勝利し、国の誇りを回復します。サッチャーは教育改革や労働争議とも熱心に取り組みます。ただ、社会保障、特に医療費の抑制に関しては「やりすぎ」と評されるほど国営医療を推し進め、国民には不評で、一時期イギリスの医師の国外脱出が続出し、英国医療は危機を迎えました。その後の労働党政権下で医療費、社会保障費の増額が図られて参りました。
しかし、その揺り戻しの結果、国は再び大きな財政赤字を抱え、財政再建のため再び保守党のキャメロン首相の手腕が試されています。英国も高齢化が進み、社会保障のあり方を間違うと国家の衰退を招く恐れが高いからです。サッチャーを意識したかのような強い意志を表明する演説に、わが国にもこのような強い政治家が現れてほしいものだと感じました。
最近の日本、何かおかしくないですか?(その14)
ストーリーの後半部分では、誰も責任を取らない孫子の世代への付け回しを批判しています。国・地方を合わせて2011年度末で891兆円の長期債務残高、これは対GDP比184%と先進国では最悪の数字だそうです。1兆円とは誰かが毎日100万円を使い続けて250年それを続けても届かないすごい額です。約900兆円といえばただ事ではありません。昭和40年、東京オリンピック景気の直後の不況でつい2590億円の赤字国債発行を決めてからわずか45年間に、積もり積もった次世代へのつけ回しが約900兆円です。“今の豊かさ”のために孫子の世代への付け回しを、若い世代は拒否しようとしています。介護施設では、平均月収19万円の若者が平均年金23~4万円(一般サラリーマン厚生年金)のご老人を介護しているそうです。世代間格差は増大し、若者が高齢者に敬意を払わなくなったと警鐘を鳴らしています。平均月収19万円の若者は女性はともかく男性では結婚もできず、従って子供も生まれません。これは大きな問題ではないかと訴えているのです。
わが国の年金制度は賦課方式という世代間の持ちつ持たれつの制度、この世代間批判をこのままにしていたら、国が成り立たなくなる恐れがあります。消費税を含め小手先ではなく抜本的な改革が出来る政治家、そして大局的観点からその政治家を支える国民という展開をどうやったら我々は迎えることが出来るのでしょうか。