天災それとも人災?その7

2010年9月7日、尖閣諸島周辺で日本の海上保安庁の巡視船「みずき」が、中国籍の不審船を発見し日本領海からの退去を命じるも、それを無視して漁船は違法操業を続行、逃走時に巡視船「よなくに」と「みずき」に衝突し2隻を破損させました。海上保安庁は漁船の船長を公務執行妨害で逮捕しました。中国政府は「尖閣諸島は中国固有の領土」と主張し、船長・船員の即時釈放を要求しました。前原外相(当時)は「こちらにはビデオもある」、「尖閣諸島には領土問題は存在しない。国内法に基づいて粛々と進める」と中国に対しても臆さずという姿勢を示しました。しかし、中国国内では半日民間団体が早速日本批判や抗議活動を展開、中国政府も複数の極端な報復活動を繰り返しました。ついにはレアアースの対日輸出を禁止したばかりか、9月21日中国本土にいたフジタの社員4人を「許可なく軍事管理区域を撮影した」として身柄を拘束しました。これらの中国政府の措置を受けて、9月24日「国内法で粛々と判断する」と発言していた菅直人首相と前原誠司外相が国際連合総会出席で不在の中、那覇地方検察庁が拘留期限が5日残っている時点で、「わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮して、船長を処分保留で釈放する」と発表、翌25日未明、中国のチャーター機で本国へ送還されました。中国帰国時、英雄扱いされた報道は記憶に新しいところです。
 これに対して、与党からも「外交なんて全くの門外漢。恫喝され、慌てふためいて釈放しただけ」、「検察に政治的判断をさせるのはどうか」、「政治主導と言うなら政治家が責任を持って最後は判断しないと駄目だ」、「事実上の指揮権発動だ」という声が沸き起こりました。野党からは、「極めて愚かな判断だ。中国の圧力に政府が屈した」、「政府は弱腰外交との批判を恐れて、検察に責任を押し付けようとしている」、「明白な外交的敗北だ。菅内閣の弱腰外交を糾弾しなくければならない」などの批判の声が噴出しました。
 しかし、ちょっと待ってください。一体全体尖閣諸島で何が起こったのか。肝心の国民は正確には知らされていませんでした。6分50秒に編集されたビデオは事件から2か月近い11月1日、衆議院予算委員会の理事ら30人のみに開示されました。世論でも映像を公開する声が高まっていたため、野党自民党は映像を国民へ全面公開することを求めましたが、政府と与党はこれを拒否しました。事件最初期の段階において、菅首相、仙石官房長官(当時)、前原外相の3閣僚はビデオを閲覧していたといいますが、一体全体この国はいったい誰が肝心な事柄を話し合い、誰が責任を持って決めるのか、全く理解できません。法務省が国益を考えて政治判断をするという、摩訶不思議な国は日本だけではないのでしょうか。

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