千葉県がんセンターで腹腔鏡手術後に患者11人が死亡した問題で、県の第三者検証委員会は3月30日、県に報告書を提出しています。同センターでは2008年6月~14年2月までの間に手術を受けた57~86歳の男女計11人が手術当日から約9か月までに死亡し、うち10人に診療行為に問題があったとしています。その10人はいずれも手術で切った臓器をうまく縫い合わせられなかったり、術後の検査が不十分で対処が遅れたりするなどの問題点を指摘されています。なかには、「腹腔鏡手術を行うには技量不足」と技術自体を問題にされたケースも含まれています。手術当日に亡くなった76歳の女性の例では、出血した際に腹腔鏡を使った止血にこだわり、対応が遅れ死に至らしめています。開腹、止血をすれば何の問題もなかったと想像されます。同センターでは07~13年に腹腔鏡による膵頭十二指腸切除術が65例行われ、死亡率は6.2%でしたが、開腹による同手術の死亡率0.41%と比較すると約15倍高かったことも示されています。まさに、腹腔鏡手術へのこだわり、何がなんでも腹腔鏡手術、そして症例数の積み上げにこだわる、群馬大学第二外科と全く同じ構図であることが明らかになりました。信頼した外科医に託した患者さんにとって、何が一番大切なのか、それは術式の問題ではなく、安全に手術を完遂することであることが、エリート外科医には理解できないようです。
また、高難度で保険適応外の7例全てが、院内倫理委員会に諮られておらず、腹腔鏡手術の実施を知らされていない患者家族もいたことが明らかになりました。組織の問題として「原因究明や再発防止への取り組みが多くの事例で見られず、死亡が続いた」と安全管理体制の不備が批判されています。検証委員会はこうした体質を「不都合な情報を表に出したくない意識の表れ」と疑問を呈しています。