この高齢者の急増、支え手世代の減少、国家の財政難の三重苦の時代にわれわれ市民がとるべき道はどういうものでしょうか。社会医療法人財団白十字会では、病気の悪化を予防する取り組みを行っています。生涯付き合う慢性病の代表である糖尿病を例に挙げますと、敵である糖尿病という病気を理解することは患者さんの義務であると考えます。そのために、当院の糖尿病センターでは、看護師や栄養士、検査技師などからなる糖尿病療養指導士がコーチングという手法を用いて徹底的に糖尿病と戦う方法を指導します。すなはち、闘病の主人公は患者さんであり、「先生にお任せ」では健康は保てないと考えるからです。
肺炎は高齢者に多い病気の代表選手ですが、口腔内の菌の塊を気管に詰まらせてしまう誤嚥性肺炎は口腔ケアによって予防・軽症化できることが分かってきました。佐世保市では病院や介護施設から自宅に戻られた高齢者で歯科医院に通えない方のために、歯科医師もしくは歯科衛生士が患者さん宅を訪問しケアを行うトライアルを行う予定です。口の中が健康になると、咀嚼、嚥下機能も向上し、栄養学的にも良好な改善をもたらすものと期待されます。
寝かせきりは、高齢者にとって最も避けたいものの一つです。寝かせきりで筋肉に負荷を与えないと1週間で20%の筋力の低下が起こり(NHK調べ)、廃用性萎縮が進み、歩行不能に至ります。末しょう循環は障害され、褥瘡(床ずれ)に悩まされ、長期の入院治療の引き金にもなります。これを防ぐには、寝たきりに至る前のリハビリしかありません。医療保険を使っての回復期リハビリ病院への入院には、対象となる疾患(脳卒中、大腿骨頸部骨折、など)、の発症から2か月以内という制約がありますので、寝かせきりに伴う廃用性萎縮は対象とならない場合が多くなります。これに代わって、リハビリを提供できる仕組みが介護保険にあるのです。寝かせきりにより廃用性の筋力低下が起こり、要介護度1以上と判定された場合には、老人保健施設において短期集中リハビリテーションという3か月間のリハビリに重点を置いた入所ができます。この方法による改善の道があることは十分に周知されていないようですので、当法人では市内の事業所にリハビリテーション相談窓口を数多く設置し、市民の問い合わせにお答えできるようにしています。是非ご利用ください。
以上、白十字会が一貫して行ってきた糖尿病教育や、誤嚥性肺炎に対する口腔ケア、寝かせきり防止などの取り組みは、病気の悪化を予防することにより健康を保つことができることは勿論、皆様から集めた大切な保険料を大切に使うことに大いに役立っていくものと思われます。