櫻井よし子さんが国際ロータリー2700地区大会の特別記念講演で指摘された首相の落ち度の1点目は、しびれを切らし陸上自衛隊のヘリにてほぼ単独の視察を強行したことでした。膨大な情報を処理し、解決策を立案するブレーンを伴わずに自分のみで単独行動を強行し、仲間に「お前たちは現場を見ていないだろ」はあり得ないことですよね。
管総理は「原発問題は官邸主導でやれる」と確信し、自衛隊にヘリから放水の指示を出しましたが、放射線量が高く効果的放水とは言い難い結果に終わりました。地上からの放水も自衛隊、警察、消防の調整がなかなかつきません。これに対して矢のような首相からの催促が続きました。原子力災害特別措置法を適用すれば、首相からいろいろな指示が出せることを説明されても「何故進まないんだ」と菅さんは逆切れするばかりだったそうです。総理の指示は口頭で個別の官僚に命じただけ、これでは官僚組織は動きません。
もともと民主党政権は政治主導、政治家とりわけ官邸が一切を取り仕切ることを目指して出発しました。官僚はその存在価値を評価されていない立場にありました。菅首相の官僚機構と東電への不信は強くなるばかりです。東工大教授で原子炉工学研究所長の有富正憲氏らを次々と内閣官房参与として官邸に迎え、その数は6人にもなりました。セカンドオピニオンを背後につけ管総理はますます高飛車になっていきます。東電や保安院などが自らの指示に抵抗すると「俺の知っている東工大の先生と議論してからこい」と言ったそうです。
各省庁は阪神・淡路大震災を先例にさまざまな被災者支援や復旧策をひそかに準備してきました。ところが政務三役の「政治主導」が障害となりました。民主党政権になり政務三役に無断で仕事をやってはいけないという「不文律」が出来上がっていました。「勝手なことをやりやがって」と叱責されるのを覚悟の上で官僚機構は黙々と対策を練ったそうですが、実行の目途は立ちませんでした。政治不在がいかに恐ろしいものか官僚は思い知ったそうです。