櫻井氏はさらに、わが国が自由保育という考え方を良しとするようになった理由について考察しています。
「1960年代から70年代に自由保育の考え方が欧米から入ってきました。それは戦前の価値観への反動が基調となった戦後の教育の中で熱烈に支持されていきました。しかし、その欧米諸国は、子供を善なる存在だと見なして自由にさせることは誤りであると気づき、過去20年強、一大方針転換をしたのです。そして、日本だけが、自由放任が良いという考え方でそのまま教育を行ってきました。この傾向に拍車をかけたのが少子化です。大事な一人っ子、もしくはふたりっこを育て、自分の子供のためには何でもしてあげるという親が増えてきました。子供のために望みをすべてかなえてやる。どんな学校にも入れてやって、個室も、パソコンも、テレビも子供専用のものを与える。こうして子供はこの世の中が自分の為に存在していると思うような環境に置かれてしまいます。子供は足らざることの不自由を体験することもなく、全く唯我独尊の価値観を身につけていきがちです。これでは見知らぬ人と折り合って、譲り合いながら暮らしていく知恵を身につけることなど、できないのです。謙虚になり、他人への優しさを実践していく賢さを身につけることなど及ばないのです。意図せずしてこんな環境を作り出したのが、いまの日本の豊さです。」と述べています。