お勉強はもう苦痛ではないですか? -慢性期医療へのお誘い- (その2)

現代社会研究所所長の古田隆彦先生によれば、現在65歳以上を高齢者と呼んでいるのは1960年代に国連勧告を受けてそう定義したのだそうです。当時の平均年齢は約70歳、現在は80歳をはるかに超えていますので、75歳以上を高齢者と呼ぶべきであると提唱されています。そうすると現役として働く期間は50年にも及びます。その50年を乗り切るために複線型の教育、つまり一定期間新たなスキルを身につける能力貯蓄の機会が必要になると述べておられます。
  医師も同じです。多くの病院は60歳や65歳が定年ですが、現在の60歳はまだまだ働き盛りで、70歳やそれ以上まで働きたいと思われておられる方が過半数だと思います。そうすると40~50年間通用する技術が欠かせません。私自身や周りの先生方をその眼で観察した経験でいえば、大学や研修医療機関で一定期間勉強して積み上げてきたスキルはその補てんがなければその同じ年数しか本当の意味では役に立ちません。能力貯蓄の機会がないまま派遣病院で忙しさにかまけていると、やがて学会に足が遠くなって参ります。そのうちに学会では、詳しくない得意でない分野が多くなり、そしてその道の専門家が主流派を形成するようになると、学会はさらにつまらなくなり、専門医であり得意分野であるはずの領域に、ぽっかりと穴があいてしまいます。独学ではそれを埋める意欲は次第に低下し、大学の現役医師と意思疎通がうまくいかなくなって参ります。どうしたらいいのでしょうか。