説明支援ナース登場の訳~その2~
その患者さんが退院されたあと、病棟には疲労感と失望感が漂いましたが、この問題の解決策はなかなか見出すことができませんでした。しかし、意外なところからヒントを頂き、たどり着いたのがこの説明支援ナースでした。
3~4年前、小泉首相の背中を押していた経済財政諮問会議の方々が、「株式会社が病院を運営したらこんなことができる」としたリストに、「医療通訳者」があったのです。医療を部外者から見たら、病院外来の説明は不足しているし、専門用語だらけで難しいので、理解させるための有料サービスとして医療通訳者を提案していたのです。
すでに無料で取り組んでいる医療機関があることも知りました。福井県済生会病院の副院長先生の考案でしたが、外来でどうみても医師の言うことを理解できていない患者さんが少なくない。そういう場合には医師や看護師のオーダーで「メディカル・コーディネーター」を呼ぶことができる。メディカル・コーディネーターは患者さんと医師との中間よりやや患者さん寄りの立場で、病状と治療方針を説明し理解して頂く。そうすることによって、患者さんの不安がなくなり誤解が減れば病院にとって好ましいことになると話しておられました。
ただ、この話を聞いた医師の中には、「コーディネーターがそのケースに合わない不適切なことを説明したら、修正するのにかえって手間ひまがかかる」と敬遠される先生もおられました。これらを参考にして私が考えた説明支援ナースの骨子は以下の通りです。
外来の看護師さんの中から選抜して、医師の説明の一部を代行するナースを育成する。診察・診断はもちろん医師の役割で治療の必要性までを医師が説明した後、実際の手技に関して代行して説明する。対象はパスが作成できるような各科の一般的な検査や手術に限定してスタートする。説明はその範囲、程度にバラツキがあってはならないので医師が主導して検査・手術の説明用パンフレットを作成する。それを用い説明支援ナースがもらさず説明し理解を求める。パンフレットにはその手技のあらましを図解し、その手技の優れた点、平均的な経過、大まかな費用等とともに、重篤な合併症の種類と国内でのその発生頻度と当院の頻度、合併症が起こった場合の処置方法などのネガティブデータも明記する。さらには、勧めている手技以外に問題解決にどのような選択肢があるのかを挙げ、患者さんや家族に選択させ納得していただく。
われわれの病院では手始めに消化器科と泌尿器科がこの業務を始めました。消化器科では上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡、ポリペクトミーを、泌尿器科は腎盂造影、膀胱造影そしてウロストーマを選びました。種類は少なくても各々両科の基本的な検査であり、手技でありますので、対象となる患者さんは多く説明支援ナースのおかげで外来において担当医が節約できる時間の総量は大変なものになりました。また、そのパンフレットに書いてあることを説明し、承諾を得たことをカルテに明記してくれますので、「聞いてない」「承諾していない」など不毛の言い争いをすることから解放されますので医師も安心です。忙しい外来時間での何よりのストレス減らしの方法の一つと思われます。