再び群馬大学第二外科の話に戻ります。
群馬大学病院は2015年3月3日、腹腔鏡による肝臓手術で患者8人が相次いで死亡した件に関して記者会見を開き、8人全員の診療で「過失があった」とする最終報告書を公表しました。発表によりますと、問題になっているのは2010年9月に胆管細胞がんと診断され胆管や肝臓を切除する手術を受けた後、容態が急変して3日目に死亡した患者さんですが、死亡から10日後、切除した肝臓の病理検査で癌ではなく良性のできものであったことが確認されました。しかし、この40代の執刀医はこのことを遺族に報告しませんでした。そればかりか、同年11月に自ら作成した診断書には「胆管細胞癌」と当初の診断名を記載しました。このとき既に癌ではないと病理学的に判明していたため、虚偽の病名を記載していたことになります。これを受け、病院は3月2日より第二外科教授の診療科長としての業務を停止し、執刀医については「医師の適格性に問題がある」として一切の診療行為を停止しました。
肝臓の腹腔鏡手術を手がけている別の病院の外科医によると、「手術後に出血や胆汁の漏れがあった例が多い。技術的に問題があるとしか考えられない」と語っています。そして、「患者が亡くなっているのに検証もせず、同様の手術を繰り返すとは極めて異常な事態。腹腔鏡手術の実績を作りたかったのではないかと疑いを持った」としています。実際、執刀医は精力的に学会活動を続け、昨年4月には日本外科学会にて自らの手術成績を「おおむね良好な結果」と発表しているのです。
肝胆膵手術が専門の神戸大学の具英成教授は、「これほど深刻な事態に至ったのは、診療科内で、手術能力の評価や手術成績の検証などチェック体制がずさんだったためではないか」としています。