群馬大学病院が腹腔鏡手術について12月に公表した院内調査の中間報告では、①問題の医師は第二外科の意見や支援を受けずに手術を続けた。②手術前に患者や家族がサインした同意文書に十分な説明を受けた形跡がない。③腹腔鏡手術の過半数は保険適応外だったのに、保険がきくとして手術し、診療報酬の請求をしていた。④手術に肝臓が耐えられるかを判断するために、肝臓の大きさや状態などを把握する手術前の検査が不十分だった、などの問題点を挙げています。
しかし、新聞報道によりますと、第二外科の教授、そして病院長がこれら常軌を逸脱する医療行為が何年間も続けて行われ、多数の患者さんが死亡していることを十分認識していなかったことが明らかになりました。組織的な観点からいえば手術実施に至るまでの間、単独の医師の判断でことが進んでしまっていることが大きな問題と考えられます。なぜなら、事前に院内の臨床試験審議委員会に申請し、審査を受けることが内規で定められているそうですが、男性医師は申請しておらず、「認識が浅かった」と話しているとのことです。
また、高難度の腹腔鏡手術後に死亡した患者について問題点を検証する死亡症例検討会は8人が死亡しても開かれていませんでした。中間報告の際、病院長はその事実を認め、「診療科長(第二外科教授)の責任は重い」と述べたそうですが、何故3年半にわたり、死亡症例の検討さえ行われなかったのか明確な理由は明かさず、「認識の問題だと思う」と答えるにとどまっていたそうです。執刀医が高難度手術を繰り返した意図について問われると言葉に詰まり、返答に窮する場面もあったと全国紙は伝えています。
腹腔鏡を使った肝臓の切除手術は比較的実施しやすい部分切除に限り保険適用され、高度な技術が必要な区域切除は有効性や安全性が十分に確認されていないとみなされ保険適応外とされています。このため保険適応外手術を行うには、厚生労働省への先進医療の届け出や院内審査組織への申請が必要になる訳ですが、この執刀医はそれを怠っていたわけです(続)。